親の思い込みを改めよう!

=何か嫌なことがなければ=

不登校と言うと「学校に行きたくない子ども達」と思われるのではないでしょうか?確かに、不登校の子ども本人は「自分は学校に行きたくない」と思っているし、実際に言葉としてそう言う場合が少なくないのですが、私が、「もし、嫌なことがなければ、学校、行きたいんじゃないの?」と聞くと、

「先生が恐くなければね」

「お腹が痛くならなければね」

「おしっこに行きたくならなければね」

「嫌いな子がいなければね」

「イジメられなければね」

等々という答えが返ってくる場合が多いです。上に書いたのは小学生の答えです。

=答えが複雑になる中学生=

中学生になると、

「疲れなければね。でも、なぜあんなに疲れるのか分からないんだ」

「女の子同士のドロドロの関係がなければね」

「仲のいい友達がいればね。でも、私には信じられる友達がいない」

「イジメのターゲットにならないという保証があればね。でも、そんな保証ってないじゃん」

というように、ちょっと答えが複雑になってきます。

=さらに微妙になる高校生の答え=

高校生になると、

「馬鹿にされたくないと思うと弱いキャラを見つけて、そいつを犠牲にして自分が優位に立とうとするんだ。で、あとから自分はなんて嫌な奴だと思う。こういうことをしているから学校へ行くのが面倒臭くなるんだと思う」とか、

「どうしてか女子(同性)が苦手。いつの間にか一人になっている。別にイジメられているわけではないけれど、何となくシンドイ。シンドイから余計に自然で居られなくなる。作り笑いをしているしかなくて、更にシンドくなる。家に帰ると玄関で力尽きて倒れる」

と言うような、微妙な心の綾(アヤ)が語られることが多いです。

=「不登校の子は学校に行きたくない」というのは単なる思い込み!=

私が良く感じるのは、「学校に行かない子ども達も何か嫌なことがなければ本当は学校に行きたいんだ」と言うことであり、一方で「でも、例外はあるなあ」と言うことです。けっして逆ではないのです。「大半の子は学校に行きたくないんだ。でも、本当は行きたい子もいるんだなあ」ではないのです。

=不登校マップで整理すると=

「不登校マップ」で問題を整理してみましょう。不登校マップを良く読んで頭に入っている方は、この項は飛ばして次に読み進んで下さい。

不登校マップでは、不登校を下記の6群にマッピングしています。

A.「病気による不登校」です。この中には「統合失調症」「子どものうつ病」など病院で治療を受ける必要がある不登校が含まれます。

B.「半分病気の不登校」です。この中には「起立性調節障害」や「過敏性腸症候群」など薬がない、あるいは薬が効かない病気が含まれます。

C.「心理的な不登校」です。この中には「ストレス障害」、「愛情飢餓感」、天災や事故など「精神的な打撃(ショック)」、学校での「イジメ」などが含まれます。

D.「極端な過保護/過干渉による不登校」です。この中には「子どもが親の奴隷」の場合も、「親が子どもの奴隷」の場合も含まれます。

E.親が「AC(アダルトチルドレン)」で子育てが「優しい虐待」になってしまう場合の不登校」です。C群の「ストレス障害」と「愛情飢餓感」に一部が重なります。

F.「発達障害による不登校」です。この中には、アスペルガー症候群など「高機能広汎性発達障害」と言われるもの、「トゥレット症候群」と言われるもの、また、「反社会性パーソナリティ障害」や一部の「境界性パーソナリティ障害」が含まれます。

詳しくは、http://kagayake.org/blog/?p=333 「今どこにいるの?不登校マップ」を参照してください。

 

=本当は学校に行きたい!=

ここから上記の各群について、考えていきましょう。

A群では、例えば風邪をひいて高熱を出している大人が今日は会社に行きたくないと感じるのと同じように、この群の子ども達も「辛くてとても学校なんかに行けない」と思っているのが普通です。でも、この子たちも「病気が治れば」学校に行きたいと思うのが自然だという点は押さえておきたいものですね。

B群では、「朝起きれない」から、あるいは「お腹が痛い」から学校には行けないとなるのですが、「朝起きられれば」、あるいは「お腹の調子が良ければ」学校には行きたい、または、病気が治れば学校に行けると思っている子が大半です。しかし、このB群では「朝起きれない」や「お腹が痛い」の奥底に、学校に行くことに何か大きなストレスがあるために、このような「半分病気の不登校」症状が出たのだと考えねばなりません。だから、次のC群と同じように、そのストレスを無くすことが出来れば「学校に行きたい」子ども達だと考えることが出来ます。

C群は、ストレス、愛情飢餓、精神的なショック、イジメなどによる「心理的な不登校」ですから、「命の泉」を塞いでしまっているそれらの原因を取り除いてあげれば、「学校に行きたい」と思う元気が湧き出てくる場合がほとんどです(残念ながら例外もあります)。心理的な原因を取り除くには相応の対応と十分な時間が必要ですが、大部分の子どもが喜んで学校に行けるようになります。つまり、条件さえ整えて上げれば、B群を含むこのC群の子ども達もほとんどが「学校に行きたい」のです。

Dの子ども達はどうでしょうか。この群は、心理的な不登校なのに対応がC群とは違うと書きました。この群の子ども達は、「家でお母さんと一緒に居たいから学校には行きたくない」とはっきり言うことが珍しくありません。これは、「子どもが親の奴隷」の場合も、「親が子どもの奴隷」の場合も同じです。中には、「お母さんが学校にずっと居てくれるなら」という条件で学校に行く子もいますが、強度の依存心があるため一人で学校生活を楽しむことは不可能です。また、当然ながら母子同伴登校も長くは続きません。したがって、この群の子ども達は、残念ながら「学校に行きたい」なんて露ほどにも思っていないということになります。理由は「お母さんと一緒でなければイヤ」だからです。ここが、この群が例外的で、一筋縄ではいかないところです。

E群は、親がアダルトチルドレンで、子どもにどうやって愛情を注いだらいいのか分からず、やることなす事「優しい虐待」になってしまい、その結果、子どもが「命の泉」を涸らしてしまう場合です。この場合は、子ども本人はたいてい自分がなぜ学校に行けないのか、理由が分かりません。ともかくも「学校に行く気力がない」と言う状態で、無理やり登校を強いられると「泣き喚いて拒否する」という場合が少なくありません。「お母さんが自分を愛してくれないから」と言う説明は、心理的に高度の自我が要求される訴えで、場合によって、中学生はもちろん高校生になっても自覚できない場合が往々にしてあります。この群の子ども達はお母さんが「変わって」、お母さんの愛情を感じられるようになると安心し、それに伴って「命の泉」から元気が湧き出てきます。したがって、この群の子ども達は、自覚してはいませんが、「お母さんが愛してくれれば学校に行けるし、行きたい」のだと考えて良いでしょう。詳しくは「アダルトチルドレン(AC)とは?」 http://kagayake.org/blog/?p=73 をお読みください。

F群ですが、発達障害(一部パーソナリティ障害を含む)があって学校と言う生活場面で様々な摩擦や軋轢から「不適応」を起こしてしまうことが不登校の原因ですが、その障害の種類や程度によって一概には言えないのが実情です。しかし、「どうしたらいいのか分からない。助けて!」という事態にならなければ、この子たちも基本的には学校に行きたいし、みんなと仲良くやっていきたいと思っています。この辺りの事情は、「発達障害を持つお子さんのお母さんからのお便り」 http://kagayake.org/blog/?p=88 に詳しいので、ご一読ください。

=絶対登校拒否は一握りです=

さて、こうして見てくると、心底「学校に行きたくない」と思っているのは、D群の「極端な過保護/過干渉による不登校」とその他の群の例外的な子ども達だけだということが分かります。不登校マップそのものが今までなかった訳ですから、こういうマッピングで不登校の調査がなされたこともありません。ですが、私の実感ですと、D群の不登校は全体の10パーセント以下であることは間違いありません。ひょっとすると5パーセント位ではないかと思います。

=「普通に学校生活を楽しみたい!」=

つまり、不登校の子ども達の9割以上は、「条件さえ整えば」、みんなと一緒に学校に行きたいし、普通に学校生活を楽しみたいと思っているのです。

=「嬉しい、学校に行きたい!」=

考えてもみてください。幼稚園や保育園に通っていた子ども達が、ランドセルや学用品や新しい洋服を買ってもらい、いついつが小学校の入学式だからとお母さんから言われていれば、ほとんどの子が「嬉しい、学校に行きたい」と期待に胸を膨らませているのではないでしょうか。何年か経ち様々な出来事があって学校が必ずしも思ったようなところではなくなってしまっても、「条件さえ整えば」、学校は本来、同世代の子ども達と交流しながらいろいろなことを学び、色々な体験を通じて自分自身を豊かにしていく場所であることに何の変化もないのです。

=興味や関心、好奇心が生きていく原動力=

興味や関心、あるいは好奇心と言うものは、人間の本質的な部分で、これは勉強に限られたものではなく、生活そのものを動かす原動力です。生活と言うのは、様々な体験であり、様々な人たちとの交流です。

=「行ける場所を別に作ろう」ではダメ=

ここを、勘違いして「彼らは学校に行きたくない。だから、学校以外の場を作ろう」と考えると、スタート地点ですでに間違った方向を向いていることになります。各地で、「適応指導教室」や「教育支援センター」が設けられて(ところにより様々な別の名称で呼ばれていますが)、「学校に行きたくない子ども達」だけを集めていますね。大半が、「イジメのない教室」、「強制のない教室」、そして「宿題も勉強もない教室」であろうとしているように見受けます。

=本来やらなければならないのは条件を整える事=

私から見ると、大半は「条件さえ整えば」、普通に教室に行ける子ども達です。でも、適応指導教室等が不要だと言っているのではないのです。教室には行けないけれど適応指導教室になら行けるという子ども達のためのシェルターはあって良いと思います。学齢期の子どもを持つ共働き家庭が今は普通ですしね。でも、本来やらなければならないのは、「条件を整えること」です。

=まずは人間関係づくり=

一人一人の子どもに向き合って、「なぜ、教室に行けないの?」、「なぜ、学校に行きたくないの?」と恐れずに尋ねてみないといけません。それが出来ないのは、そういうことが聞ける人間関係が出来ていないからでしょうね。であれば、そういう人間関係をまず作らないとなりません。そういう関係作りの場としての適応指導教室等であれば、ほんとうに「社会に適応できるようにする指導が可能になる場」と言えるのだと思います。

=見えて来る条件作り=

もし、そういう場が出来れば、その子の為にどういう条件を整えてあげればいいのか分かるでしょう。学級(クラス)にいるやんちゃな子が苦手なのであればそのやんちゃな子を指導しなければいけないかもしれません。担任の先生が恐いのであれば、担任の先生に指導方法を変えてもらう必要があるかもしれません。イジメがあるならいじめを止めさせないといけません。

=家庭の問題が分かるかもしれない!=

あるいは、家庭に問題があるのかもしれません。ひょっとしたら愛情を感じられずに安心できないのかもしれません。過保護/過干渉で自立心が育っていないのかもしれません。何か精神的なショックを受けて茫然自失(見ざる聞かざる言わざる状態)なのかもしれません。

ひょっとして、こんなやり取りから子どもが何か心の病気を患っているかもしれない事が分かるかもしれません。

=性格的な弱点を自覚できるかもしれない=

中学生や高校生ともなれば、その子に固有の性格的な弱点やこだわり、思い込みなどを本人に自覚させられるかもしれません。こういうことに、もしその子が気が付けば、その子の「人との交流の仕方」は劇的に変わるかもしれません。

=本音は不登校児を隔離したい?=

要するに、いま、全国の小中学校がやっている「適応指導」や「教育支援」では、何も問題は解決しないのかもしれません。その根っこには、「学校に行きたくない(実は行きたい)子ども達」を別のところに隔離して、「普通の子ども達」の教育を優先しようという意図さえ見え隠れしています。どうしてそんなことになるかと言うと、根底には、「不登校の子ども達は学校に行きたくないんだ。だから、どうしようもない」という大人の「決めつけ」があります。見方が根本から間違っているのです。

=不登校の再生産システムになっている?=

これはその当事者の子ども達にとって大きな不幸であるばかりか、「学校に行きたくない子ども達」を隔離して、学校や学級が抱える問題をないかのように扱うからこそ、ますます「学校に行きたくない子ども達」を増やしてしまうという悪循環を加速しています。不登校の再生産システムが確立していると言っても言い過ぎではありません。

=齢四十を超えようという「引きこもり」の人々=

こうして不登校になり、やがて「引きこもり」になった子ども達が、今や何十万人という規模に膨れ上がってしまいました。私が時々訪問する引きこもりの方の中には齢四十を超えようという方々が少なくありません。

=AC(機能不全)化する社会=

この道三十年と言う視野から見ると、アダルトチルドレン(AC) の親がますます増えているような気がします。その背景をさらに大きな視野から見ると、社会全体がAC(機能不全)化しているようにも見えるのです。しかし、この問題を語ろうとするには紙数が尽きました。

=学校に行きたくて苦しんでいる不登校児たち=

このブログの読者の皆様には、「不登校はけっして学校に行きたくない子ども達ではない。むしろ、学校に行きたくてその為に苦しんでいる子ども達なのだ」という認識をもって頂きたいと思います。また、一人でも多くの方がこういう認識をもって、教育行政や教職員に働きかけをして頂きたいと思っています。

以上

  • カテゴリー: 不登校 |
  • 投稿日: 2017年12月30日 |

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