発達障害を持つお子さんのお母さんからのお便り

大門様

ご無沙汰しております。

以前お世話になりました○○です。前回メールをしたのは、息子が高校入学のころですから三年前になります。

 

高機能広汎性発達障害の息子ですが、このたび無事、工業高校を卒業し企業直属の工業系の専門学校に進学します。この三年間の間にも、時々立ち止まりそうになりながら、たくさんの先生方のサポートを受け、何とかここまでたどり着きました。

入学して半年は嘘のように張り切り、頑張っていましたが、1年の冬から突然学校に行けなくなる症状も見え、このままでは卒業は無理ではないかと何度も思いました。

しかし、幸いなことに、工業高校は生徒数に対する教員の数が多いことと、授業も実習など少人数で行うことも多く、苦手な女子が少ないことなど、息子のような生徒には環境面で合っていました。先生方に息子の障害やその時々の状態を何度も説明し、教頭先生や養護の先生なども含め全ての先生方に理解してもらい、支援してもらうことが出来ました。また、息子の同学年の保護者など、困った時に私の話を聞いてくれて助けてくれる多くの人たちがいたことも大きな幸いでした。こうして、とうとう高校生活を全うすることができました。

工業系の学習が好きであったことも、ここまで来られた一番の理由でした。そして何よりも友達に恵まれたことが大きかったと思います。息子が通った工業高校は息子のことを理解して付き合ってくれる子が多かったように思います。また、同じ障害を持つ似た者同士も多かったのかもしれません。いろいろな点で過ごしやすかったのだと思います。

しかし、中学2年3年の学習量が不足していたことや、実習のレポートや提出物などが大変多く、普通科の高校に比べると少し大学に似たところがあって、先の見通しを立てることが苦手な息子は十分にこなすことができずに悩み苦しみ、一時期は先生が怖い・・・学校に行けない、という悪循環になってしまいました。

また、黒板の文字をノートに書き写す作業が苦手なのでノートが取れず、それも大変苦労しました。しかしながら、先生方と協力して課題リストなどをもらい、私が提出期限をカレンダーに記入したりすることで、見通しをつけやすくして声かけを心がけるようにしたところ、3年生になったころには何とか自分でこなせるようになりました。

友達にも「ノートを貸してくれ」ということが言えずにいましたが、それも3年になってからは少しずつ言えるようになり、先日、息子の口から「俺はいつから人に頼れなくなったんだろう・・・小学校までは平気だったのに、中学1年のころからだな」と、自己理解を示す言葉が聞けるようになりました。

 

4月から通う専門学校は企業の中の専門学校ということで、4月からは先生方も企業の社員ですし、専門分野の即戦力を育てる学校なのでカリキュラムは大変ですが、社会に出る助走期間として学ぶには最適な環境だと思います。

来年には就活をして2年後には社会人となる予定です。本当に息子の子育てでは、あきらめないこと、焦らず、本人の意思を尊重し待つこと、可能性を否定しないことなど多くのことを学びました。

 

私は保育園で障害児加配の身分として働いています。自分の子どもを含め、多くの発達障害の子どもやそのご家族とかかわる中で、発達障害児は無限の可能性を秘めていること、障害があることを決して隠したり恥ずかしがったりする必要はないこと、周りの環境さえ整えてあげれば社会の中で立派に生活していかれること、ちょっとした言葉がけの工夫でパニックを起こさずに済むことなど、たくさんのことを学んできました。それをできるだけ悩んでいるご両親らに伝えることを心がけながら仕事をしています。

 

失敗したことも多々あります。でも、いつも愛情を持って、わが子を理解することを心掛け、一番の理解者になってあげることで、時間はかかりますが、学校の先生との連携にも成功してきました。一番大切なことは、本人に決定権を持たせること、結論が出せるようにサポートする事といろいろな経験値を与えることが大切だと思っています。 レールを敷き過ぎることがないように、自分(親)が当たり前だと思っている方向に知らず知らず引っ張っていくことがないように気をつけてきました。

その結果、先日、自宅で友人のお子さんの相談にのっている際に、息子が言った一言は、

「一番苦しいときに、『いいよ、自分のペースでゆっくり考えよう。大丈夫だから』とお母さんが言ってくれたことが良かった」でした。

過去を振り返り、自分自身を見つめ、自己理解ができるようになってきている息子の姿がそこにありました。まだまだ社会に出て働くまでには時間がかかると思いますし、社会に出てからも悩むことが多々あると思いますが、これからも母親として、子どもが困ったとき、悩んだときに「どうしよう、困った、どうしたらいい?」といつでも聞いてもらえる存在でありたいと思っています。また、親にとって一番大事なのは、「なんとかなるさ!」というおおらかな気もちなのだとも思います。

また、これからも、この教訓を生かして、障害のある子どもの保護者にできるだけ自分の経験を伝えていこうと思っております。

 

5年前、大門先生にいろいろ教えていただき、アドバイスしていただいたこと本当に感謝しております。また、折を見てご報告をさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

 

  • カテゴリー: 発達障害 |
  • 投稿日: 2015年03月22日 |

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

You may use these HTML tags and attributes: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong>

*