友達にも心を開けなかったUさんの相談から(前半)
=箸が転がっただけで笑い転げる年代?=
人間関係に悩むことは、思春期の特に女子には、昔から少なくなかったのではないでしょうか?中学生は「自分はまだ子供だ」という幼い感覚で友達と笑い合えるし、高校生は「私は反抗期なの!」と親には言いながら、食卓で「箸が転がっただけで大笑い」する年代などと昔は言われたものですね。
=笑う青春?そんなのは昔話?=
一方で深く悩む青春もあり、他方で笑う青春もあり、どちらもお年頃の中高生には当てはまる現象のような気がします。どちらにせよ、何かとても明るいイメージが湧いてくるのですが、これは昔話だと言ったら言い過ぎでしょうか?
=人間関係に苦しんだ末の不登校?!=
もし、我が子が、「自分が出せない」、「自分の意見や個性を主張出来ない」、「親友と言える友達がいない」、「学校での友達付き合いが辛い」等々の悩みで不登校になるとしたら、どのようにお感じになりますか?現実には、こう言う不登校がすごく増えているという実感が私にはあります。
=名付けて「自分が出せない症候群」!=
ここで、二十歳の女性のメール相談を例に考えてみたいと思います。中高生ではなく、二十歳の女性の相談を取り上げたのには訳があります。この女性が、もう小学校時代から「自分が出せない」「友達が出来ない」「友人関係が辛い」という悩みに苦しんで来たからです。この人の相談を考えてみると、小学生時代、中学生時代、高校時代、そして大学時代まで、年代に応じて「自分が出せない症候群」をよく表していると思います。
=Uさんの最初の相談メール=
『はじめまして。
私はいま二十歳で、不登校で悩んでいます。私は高校を卒業して大学に入ったのですが、不登校のためその大学を一年で退学し、今は短大に入り直しました。ところが、また不登校になり、環境が変わっても自分を変えることができませんでした。』
=本当の事を言えばドン引きされる?=
『私の不登校の原因は、人と会話するのが苦手だからだと思います。特に、昼食時間がいちばんしんどいです。一時間近くも友達と過ごさないといけなくて、その間ずっと話をしなければならないんです。長い沈黙があると自分はつまらない人間だと思われる恐怖を感じるし、ちゃんと話せた時でも、帰宅すると、もっと違う返事をしたら良かったんじゃないかと後悔してしまいます。また、私は友達に趣味を聞かれても、本当のことが言えません。本当の事を言えばドン引きされると思います。しょうがなくて、嘘をついて誤魔化します。嘘をついて誤魔化し、あとはおかしくもないのに愛想笑いしている自分が嫌になります。毎日この繰り返しで、本当に疲れてしまいます。』
=どうすれば他の人たちみたいに楽しく会話することが出来るのか?=
『学校を休んで家にいるとすごく気が楽で、一人で外出もできるので、自分はただの怠け者かもしれないと思ったりもします。これから、あと一年以上は学校に行かないと卒業できないので、どうすれば楽しく通えるのか、どうすれば他の人たちみたいに楽しく会話することが出来るのか、お聞きしたいです。長文すいませんでした。』
=くわしく事情を聞いていってみると=
『自分に自信がなくなったのは、小学校の高学年くらいからだと思います。その頃の私の友達は、明るくて誰とでも仲良くなれる人だったので、私は、いつもその人のおまけだと思って、ずっと劣等感を感じていました。その友達がいるから、周りの人は自分にも話しかけてくれるのだと思っていました。』
=自分が嫌いだった!=
『正直に言うと誰かに引っ付いて生きているような自分が嫌いでした。だから、小学校を卒業してから、その友達と連絡することもほとんどありませんでした。また、その頃から、自分の外見にもコンプレックスを感じていました。それで、自信を無くしたんだと思います。』
=中学生時代のイジメ=
『人が怖くなったのは、たぶん中学からだと思います。中学生になってイジメが起こるようになって、いつ自分がいじめられるか毎日が不安でした。いじめのリーダーに嫌われないように必死でした。』
=好きだった友達を裏切った!=
『たとえば、私は人に対して嫌いとかめったに思わない方なのに、イジメのリーダーから毎日誰かの悪口を聞かされて、共感している様に振る舞いました。また、友達がイジメの対象になったときには、自分がいじめられないように友達を裏切ったりもしました。イジメのリーダーは好きではなかったのに、自分がいじめられないために好きだった友達を3人くらい裏切りました。そんな弱い自分がすごく嫌だったし、今でも裏切ったことへの申し訳なさが心に残っています。』
=高校時代「自分は偽物?」=
『そして、中学を卒業してからも、嫌われないように人の顔色を常にうかがって接することしかできなくなりました。そうすると、周りからは人懐っこいって思われるようですが、その自分は偽物だから、最終的に、良い人を演じるよりは、あまり人と関わりたくないと思うようになりました。またイジメが起こるのではないか、そうなったら、また自分は友達を裏切るのではないか、そう思うと人と親しくなることが嫌でした。』
=Uさんのお母さん=
『母とはけっこう仲が良いです。大学も母が決めてくれました。でも、最近、母の意見と自分の夢が合わず否定されたことがあったので、将来のことはあまり話しません。それ以外はなんでも打ち明けられます。』
=Uさんのお父さん=
『父とは、もうだいぶ前からちゃんとした話をしたことがありません。父の言葉にひどく傷ついたことがあって、それから拒絶していました。でも、最近は時間がたって、そのことがあまり気にならなくなったので、以前よりはマシになりました。』
さて、お母さんとお父さんの話が出て来たところで、このお話の前半を締めくくります。
ここまでのUさんの話で何かおかしいな?と感じた方はいらっしゃいませんか?Uさんのお母さんを評する言葉を聞いて、何か腑に落ちないと感じた方は、相当に鋭いと思います。
それでは、来週の後半をお楽しみに!
前半以上
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