機能不全家庭を生き延びたAC第5回「プリンセスプリンセスプリンセス」
子どもが自らに決して幸福をもたらすことがない家庭をどのように生き抜くのか、今回は第5回「プリンセス プリンセス」を解説します。
=意志なき人形=
おそらく漫画から発してアニメでヒットした「プリンセス プリンセス」から取られたネーミングだと思います。「プリンセス プリンセス」とは、要するに、徹底的に自分の意思を封印してしまうことで、自分の身の安全を守ろうとする姿です。「意志なき人形」を演じることで、親から自分の意思を完全に無視され、まるで人形のように扱われることを欲しています。人形になりきれば傷つかなくて済むと固く信じているかのようです。
=人格を否定され続けているのと同じ?!=
人形のように扱われるとは言っても、実際は親にとって都合のいい人格や意思を持つこと以外は許されないのですから、常に人格を否定され続けて生きるのと同じです。しかし、「プリンセス プリンセス」は自分が否定されていることに気が付こうとはしません。いえ、気が付いているのに、その事を無視しようとする姿だと言って過言ではないかもしれません。
=どの性格タイプに多いのか?=
親に向かってすべき自己主張を諦めてしまい、親の言う事に黙って服従するかのように「意志なき人形」を演じるのですから、基本的にはどの性格タイプでもなり得るという事だと思います。しかし、「プリンセス プリンセス」を演じている子どもに会って私が感じるのは、この人はもともと「心の中で遊ぶ平和主義者」なのではないか?という事です。様々な出来事に直面して、「こんなつまらない事で親と衝突してもしょうがない」と自分を納得させてしまう事が積み重なって、次第に自分の意志を封印してしまうのです。
=元々の性格=
このタイプは、もともと穏やかで控えめな人柄です。控えめで人と衝突するくらいなら「譲歩してしまった方がましだ」とか「妥協してでも事を荒立てたくない」と感じるタイプです。こうした穏やかさがこのタイプの人気の秘密ですが、本人は友人関係には比較的淡泊で、熱烈な親友が欲しいとは概して思っていません。友達の輪の中に居ても、その場に合わせてうなずいているだけで、心の中ではその場の話題とは全く関係の無いことを考えていることが少なくありません。ですから、急に質問を振られたりすると、「あ、ゴメン、いま聞いてなかった。なんだっけ?」とまごついてしまうことが度々あります。
=あっけなく転落!=
「心の中で遊ぶ平和主義者」の根源的な欲求は、自分にとっての内面的な世界が安定していること、そして、自分の心の平和を維持して行くことなのです。ところが機能不全家庭は、絶え間ない葛藤(カットウ)や軋轢(アツレキ)の連続であり、内面的な平和はいつも脅威にさらされています。そのため、まだ元気が残っている時には、親の指示に反抗できないまでも、頑固に無視するという態度に出ることもあるのですが、大抵はこれが崖っぷちの最後の抵抗で、あっけなく崖から転落してしまいます。
=心の中で何が起こっているのか?=
転落というのは、自分の内面に残されたわずかな平和に必死でしがみつき、家庭という「外界」で起こっている「不和」「摩擦」「衝突」「暴力」などを自分の意識の外に閉め出そうとするのです。自分の心の外での出来事に無反応になりますから、往々にして記憶喪失になることも珍しくありません。また、「心の中だけは平和だ」という幻想を守るために多重人格、すなわち複数の下位人格(サブパーソナリティ)に分裂することで、自分の意識を消そうとする事さえあり得ます。これが、「プリンセス プリンセス」を演じている子どもの心の中で起こっている事です。
=意識しない恐怖心!=
人形としての役割を背負った子供は、自由に楽しい子供時代を過ごすことが出来ず、成人したのちも「親または誰かの望んだ通りにしないと破滅する」という恐怖心に苛まれています。しかも、厄介なのは、その恐怖心になかなか気が付かないという事です。人格を否定され無視されることそのものに依存しようとするからです。この意味では、大人になっても、モラハラ、セクハラ、パワハラの被害者になりやすいとも言えます。
=命なき可愛い人形=
自由であることは不安であり、恐怖を引き起こす事なのです。プリンセス プリンセスはこの意味で、「命なき可愛い人形」を演じて生き延びようとしているのです。
以上
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- カテゴリー: 未分類 |
- 投稿日: 2019年01月19日 |