カウンセラー泣かせの不登校?後半です!
前半から続きます。
=抑圧は「記憶障害」を伴う=
出来事を起きた順に整理して考えると
学校でショックな出来事が起きた
そのショックを目眩(メマイ)や頭痛に置き換えた(転換性障害)
学校に行けなくなった(疾病利得)
ショックな出来事を忘れた(解離性障害)
家で平和な日常生活を送ることが出来るようになった(疾病利得Ⅱ)
と言う風に考えることが出来ます。
=身体表現性障害とも言う=
この一連の流れを「心理的防衛機制」としての「抑圧」と呼びます。こころの打撃を目眩(メマイ)や頭痛という身体の症状に置き換えたという意味では「身体表現性障害」とも呼びます。そして、「抑圧」はこころの打撃となった出来事を無意識(意識の下)に押し込んで忘れてしまったことにするという「記憶障害」を伴います。記憶障害と言っても、忘れたことにしてしまったのであって、実際に忘れたわけではありません。まさしく、「思い出そうとすると頭が真っ白になる」と言う状態で、思い出すことが出来ないのです。
=受け入れるには大きな悲しみが伴う=
先の婚約者を交通事故で亡くした女性の場合も、起きた出来事をなかったことにする「否認」という防衛機制が働いていますが、この場合、記憶障害は比較的短く、徐々に起きた現実を受け入れていくことが出来ます。もちろん、受け入れるにつれて大きな悲しみに直面しなければならないことは言うまでもありません。
=何年も忘れたまま?=
ところが、不登校で良く起こる「抑圧」は期間が長く、ともすると何年も忘れたままの状態が続きます。この間、表面的には何ら問題がないかのように見える人がいる一方で、「起立性調節障害」が何年も続いたり、高校進学や大学進学と言う節目で原因不明の不登校がぶり返したりする人がいます。場合によっては、ある日突然、記憶がよみがえり、パニックを起こしたりすることがあります。これを、フラッシュバックと呼んだりします。
=無理やり思い出させようとするのは禁物=
忘れたことにしている出来事を無理やり思い出させようとすることは禁物です。無意識は必死になって記憶を更に心の奥底に押し込もうとしますから、ガードが固くなる一方です。そうなると、抑圧の悪影響と言うのは強まります。私の経験ですと、たとえば信頼していた友人に約束を破られたという出来事を抑圧したとすると、その悪影響と言うのは、その出来事を覚えていてショックを受けるよりも、ずっと大きなものになります。
=抑圧の悪影響は大きくなる=
覚えてさえいれば、泣いて怒ったり、親に当たり散らしたり、翌日学校に行ってその友達に抗議したり、訳を聞いて相手にも事情があったことが分かったり、こころから謝ってもらったり、悪意の裏切りだったとしても、自分の友情に値しない相手だったと諦めることも可能になってきます。つまり、怒りや悲しみやショックを和らげる方法も出てくるのです。しかし、その出来事そのものを抑圧してしまうと、そういう現実の対処が一切できなくなってしまいます。不登校になって、その相手と会う事もなくなれば、何がショックだったのかさえ分からないまま、登校しようとすると嫌な感じがして、「なぜだか分からないけどどうしても無理!」となってしまいます。
=あわてて転校などさせない=
不登校に、この「抑圧」が絡むと事態は難しくなります。心理的な不登校(C群)の中でも最も難しい不登校と言って良いかもしれません。親が慌(アワ)てて転校させるなどの対処をしないことが大切です。下手をすると、その出来事が起きた学校という「抑圧の舞台」を奪ってしまうことになりますから、解決の糸口を失ってしまう事にもなりかねません。
=見えて来る二重三重のストレス=
カウンセリングで、固く閉ざされた心を紐解いていくと二重三重に重なったストレスが見えてきます。学校、クラス、部活動、塾、それに家庭でのストレスが重なっている場合などです。
=絡み合った原因が逆に学校復帰の手がかりに=
不登校は、多元的だと常々言っていますが、抑圧を伴う不登校も原因は一つではありません。本人の性格タイプも含めて、いくつかの原因が絡まっていることが、むしろ、解決の糸口になります。こうした複数のストレス源を言葉にしていくことで、こころの重しが取れたようにポッコリと失われた記憶がよみがえってくることがあります。防衛機制が外れるのです。
=大切な学校側の配慮と協力=
それがなくても、嫌な感じがする人間関係を確かめて行ける場合が少なくありません。こうして、学年の変わり目などに、学校側の協力を得てクラス編成を工夫できると、多くの場合で学校復帰が可能になります。
=苦しむ姿こそが正常?!=
もう一度、婚約者を亡くした女性の話に戻りましょう。茫然自失で体が動かなくなる、さらに、婚約者の死を忘れてしまうというのは、心が正常に働かない、つまり障害された姿です。本来は耐えがたい痛みと悲しみに苦しむ姿こそが正常なのです。
=起立性調節障害が原因なのではない!=
同じように、この例で取り上げた中2女子も、起立性調節障害という病気が不登校の原因なのではなく、その病気の原因として幾重にも重なったストレスがあって、心が正常に働かなくなってしまったと見ると、不登校への正しい対処の仕方が見えて来ます。学校には行かせずに十分に休ませる一方で、そのストレスを自覚できるようなカウンセリングを積み重ねていくことが是非とも必要です。
以上
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- カテゴリー: 不登校, 抑圧(心理的防衛機制), 起立性調節障害 |
- 投稿日: 2018年08月13日 |