一筋縄ではいかない!「不登校ではないけれど」中編

回答者 大門隆:「とても良いお嬢さんで今のところ問題ないのではないでしょうか」

=固定的に考えると間違いの元=

個人差もありますが、小学校高学年から中学生にかけての女子は「思春期前期」に当たり、とても難しい時期です。 この春期前期に当たって親がもっとも注意しなければいけないことは、現在、子供が持っている欠点や弱点を一生続くものとして固定的に考えては間違いになると言うことです。

=外見だけでは分からない不確かさ=

身体的な変化が大変に大きなものである以上に、「自我(意識)」が著しく発達する一方で、漠然とした不安や自分にとって違和感のある衝動を感じる時期でもあり、非常に不安定になるのが普通です。 また、愛情とか友情とかそれまでなんの疑いもなく信じてきたものに対して、実在感を感じられなくなったり、頼りなく不確かで不安を感じたりしやすくなる時期でもあります。

=揺らぐ自己肯定感=

さらに、自分というものに対して、それまでは漠然とした肯定感を持ってやって来たのに、親から見るとごく些細なことから自己否定感を持ち、安定して自己肯定感を保持していくことが難しくなります。 自分自身に対してと同じように、他者の目や評価に敏感になるばかりでなく、親や先生そして友達に対しても不信感や否定感を抱きやすいとも言えます。 また同時に、自分が友達から否定され疎外されるのではないかという怖れを抱くようにもなります。

=こころのバランスを崩しやすい過渡期=

早いお子さんですと既に中学時代から、「自分とは何者か」とか「自分らしさとは何か」という、いわゆる「自我同一性の獲得」が、全容を見ることが出来ない巨大な「壁」として立ち塞がっているように感じられる年頃でもあります。 つまり、精神的な成長が、激しく加速したり、逆に急ブレーキがかかったり、心と体のバランスのみならず心の中の「内的なバランス」も崩しやすい傾向が強まる時期なのです。 つまり、「過渡期」なのです。

=それほど大きな問題とは言えない!?=

こうして考えてくると、MM様がお感じになる心配も、お嬢様が「過渡期」にいることの変化の過程として考えれば、それほど大きな問題とは言えないのではないでしょうか。

>本当によく頑張っていると親でも感心するのですが、精神的にいっぱいいっぱいのようで

これについて、親として「部活を止めろ」「学校を休め」「志望校レベルを下げろ」と言えるでしょうか?MM様がおっしゃる通り、そうは言えないと思いますし、たとえ言ったとしてもご本人が従わないのは明白ですから、共感を持って見守るという以外にないのではないでしょうか。

>1.「自分は愛されていない。もう嫌だ。死にたい」と言うのです。

自分が大事にされている、と思ってほしいですが、でもそこで物を買うことで精神的に満たされるのでしょうか?MM様がおっしゃる通り私も、かえってマイナスのように思います。 お答えの冒頭で、親の愛情など今まで信じられてきたものについても実在感を失ったり疑ったりしがちだと書きましたが、お嬢様の場合、本当にご両親の愛情を疑っているでしょうか? 私にはどうもそのようには思えません。 自分の要求を通すための方便ではないでしょうか。

=ラインの問題=

ここで「ライン」の問題に触れておきます。

私のところに通って来る子供達からも耳にしますが、女子の間では既にほとんど必須のアイテムになっている感がありますね。 ただ、「群れ」を作りたがる女子の間で強力な「統制力」としても働いていて、イジメの武器にもなり得ますし、非常に有害な側面があると私も危機的に感じています。

=親に禁止されていると言って持とうとしない子もいる!=

その統制力を嫌がって、親に禁止されていないにもかかわらず、「スマホもラインも親に禁止されたから」という理由を表看板にして、スマホを捨てる子、あるいは最初から持とうとしない子どもがいます。友達には「メールで一対一でやりたい」と言っているそうで、それなりの支持はあるそうですよ。

=娘に悩み苦しんで欲しい?!だから…=

ただ、MM様の場合、お嬢様が欲しいと言っているのですから、親として考えなくてはなりませんね。 買い与えれば、また「ライン」で時間を取られるでしょうしね。 しかも、買い与えても、精神的に満たされるかと言えば、もちろん、そんなことはないでしょうし・・・・・・・。 でも、私なら、娘が欲しがれば結局は負けて買って上げてしまうでしょうね。 なぜかというと、もし娘が欲しいと思うなら、ラインの使い方について、すなわち友達との付き合い方について娘に悩み苦しんで欲しいと思うからです。

>2.「親なんだから当たり前。自分が欲しくて産んだ子でしょ。自分は産んでなんて頼んでない」と言う。

これも、ずいぶんと酷い言いぐさですが、自分の要求を通すための単なる方便ではないでしょうか。

>それは分かるのですが、そのままの考えで行くのはとても心配です。

そのままの考えでは行かないでしょうね、今は「過渡期」ですから。

>3.「あんたと違ってヒマじゃないんだからやらなきゃいけないの!」と言う。

ほんとに憎たらしいほど甘えていますね(笑)。

=神すぎる?MM様の対応!=

以下、弟への強烈なライバル意識、客観的に判断が出来ないところ、百かゼロかの完璧主義、他人(特に母親であるMM様)に判断してもらいたがり他人のせいにする傾向などなど、「過渡期」故の問題であり、今のところ何か本質的な問題に突き当たって苦しんでいるとは言えないと思いますよ。 お母様の対応もおおむね良くできている、というより、ある意味ではほとんど「神すぎる」対応ではないでしょうか。

=問題はそれでも起こり得る!=

MM様、 とは言え、必ずしも「だから何も問題はないですよ」と申し上げているのではありません。 むしろ、私が申し上げたいのは、「問題はそれでも起こり得る」ということです。 親がどんなに愛情を注ぎ、どんなに立派な親であろうとしても、冒頭で書いたような思春期の問題が、現実の精神的な危機となって、病気や障害にさえ発展し、子供に苦痛を与え、従って親に苦悩を与えるような事態が本当にあり得ます。

 

では、どのように考え、どのように対処したらいいのでしょうか?

以上(後編に続く)

 

  • カテゴリー: ご相談 |
  • 投稿日: 2018年05月14日 |

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