子どもはどのように機能不全家庭を生き抜くか?その3

子どもが自らに決して幸福をもたらすことがない家庭をどのように生き抜くのか、今回が第三回、最終回になりました。今回は「プリンセス プリンセス」と「スケープゴート」を解説します。

 

「プリンセス プリンセス」

意志なき人形

おそらく漫画から発してアニメでヒットした「プリンセス プリンセス」から取られたネーミングだと思いますが、私は漫画もアニメも知らないため、ネーミングの背景は分かりません。「プリンセス プリンセス」とは、要するに、徹底的に自分の意思を封印してしまうことで、自分の身の安全を守ろうとする姿です。意志なき人形を演じることで、親から自分の意思を完全に無視され、まるで人形のように溺愛されることを欲しています。人形になりきれば傷つかなくて済むと固く信じているかのようです。

人格を否定され続けているのと同じ?!

親の溺愛と言えば聞こえは良いかもしれませんが、実際は親にとって都合のいい人格や意思を持つこと以外は許されないのですから、常に人格を否定され続けて生きるのと同じです。しかし、「プリンセス プリンセス」は自分が否定されていることに気が付こうとはしません。いえ、気が付いているのに、その事を無視しようとする姿だと言って過言ではないかもしれません。

どの性格タイプに多いのか?

親に向かって自己主張を諦めてしまい親の言う事に黙って服従するばかりか、親の希望や願望を先取りして、意志なき人形を演じるのですから、基本的にはどの性格タイプでもなり得るという事だと思います。しかし、「プリンセス プリンセス」を演じている子どもに会って感じるのは、この人はもともとは「心の中で遊ぶ平和主義者」なのではないか?という事です。事にぶち当たって、「こんなつまらない事で親と衝突してもしょうがない」と自分を納得させてしまう事が積み重なって、次第に自分の意志を封印してしまうのではないかと思われることが少なくありません。

意識しない恐怖心!

人形としての役割を背負った子供は、自由に楽しい子供時代を過ごすことが出来ず、成人したのちも「親または誰かの望んだ通りにしないと嫌われる」という恐怖心に苛まれています。しかも、厄介なのは、その恐怖心になかなか気が付かないという事です。人格を否定され無視されることそのものに依存しようとするからです。この意味では、圧倒的に、モラハラ、セクハラ、パワハラの被害者になりやすいとも言えます。

命なき可愛い人形

自由であることは不安であり、恐怖を引き起こす事なのです。プリンセス プリンセスはこの意味で、「命ない可愛い人形」を演じて生き延びようとしているのです。

 

 

「スケープ ゴート(生贄のヒツジ)」

自分が犠牲になろうとする!

スケープ・ゴート(Scapegoat)ですが、「身代わり」とか「犠牲者」と呼ばれることもあります。要するに、家族内の緊張や衝突や暴力を自分が無意識に引き受けることで、未然に防ごうとするのです。自分が問題行動を起こすことで、緊張や衝突や暴力が現実のものとなる前に、自分が犠牲になろうとするのです。このため、家でも学校でもどこへ行ってもトラブルを起こします。攻撃的に振る舞い自分の存在を主張することで、家族の中の本来の問題から家族の目をそらす役割を無意識に果たそうとしているのです。

自分の起こした騒動で自分が人を傷つけていることも実は知っている!!

しかし、自分の行動が人を傷つけているのを知っていますので、そのことで自らも激しく傷ついています。そういう風にせざるを得ない自分を責めてもいるのです。問題を起こそうとする衝動の底には巨大な怒りが煮えたぎっています。その怒りはしばしば自らに向かいますので、自傷行為として現れます。また、孤独に耐えられず、早くからアルコールや薬物に依存する傾向があります。また少女の場合には、年少妊娠などの非行に走りやすいと言えます。

非行少年、非行少女に多い!?

無意識に、親からの「見捨てられた感」に苦しむよりは、問題を起こしてでも親の注目と愛情が欲しいと感じているのです。自分が問題児であり続けないと親の愛は自分に注がれることはないのだと信じているかのようです。ネグレクト(無視)されるよりは、親に殴られたいのです。こういう心の傾きは学校でも繰り返されますので、イジメのターゲットになりやすい面があります。それでも、無視されるよりはイジメられる方がましだと感じているのです。コンビニの駐車場でタバコを吸っているような少年少女の中には必ずと言っていいほどこの「スケープ・ゴート」がいます。

自分らしさにこだわり抜く個性派に多い!

その外面的な行動に関わらず、内心では周囲をよく理解していて、罪の意識にいつも苛まれています。不良グループの中では思慮深く、仲間の気持ちをとても良く理解しています。家庭でのみならず、仲間が攻撃されるような場面でも、悪役を買って出て戦い、仲間を守ろうとします。プライドが高く傲慢にも見えますが、性格的には優しい子です。本当は、家族のことを思い、ひとり胸を痛めているのに、それを素直に表現できないのです。このため、自信がなく、自己評価が極端に低く、それでいて誰に対しても反抗的で人の善意や愛情を受け入れることが苦手です。それを最も欲しがっているというのに!!!スケープゴートは、この意味であえて「問題児」を演じて生き残ろうとしているのです。

 

さて、これで六つの役回りを解説しました。あなたにとってどの「役回り」がいちばん心に響いたでしょうか?もし読んでいて涙が出てくるような「役回り」があったとしたら、あなたは幼少期、その役回りを演じることで、「機能不全家庭」を生き延びたのかもしれません。

ご自分の生い立ちやお子さんの気持ちを理解する一助にして頂ければ幸甚です。

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