子どもはどのように機能不全家庭を生き抜くか?

前回は、「機能不全家庭」をキーワードにして、「毒親」と「AC(アダルトチルドレン)」を考えてみました。そこで、今回は、子どもがどうやって「機能不全家庭」を生き抜くのか、そこに焦点を当ててみたいと思います。家庭の過酷さに向き合うにも、その子どもの性格に依って色々な向き合い方があります。つまり、子どもの性格によって家庭内で演じる「役回り」が違って来るのです。子どもは自分が演じやすい役を演じることによって、その過酷さを耐え忍ぼうとするのです。どんな役を演じるか、というとまるで「劇」のようですが、実はある意味、子どもは必死で「劇」を演じているということが出来ます。ここでは、六通りの「役」をご説明していきます。

今回は、そのうちの二つ、「ヒーロー(ヒロイン)」と「リトル ナース(小さな看護者)」です。

「ヒーロー(ヒロイン)

ヒーロー(ヒロイン)になって生き延びようとするのは、私が「正義を実現したい理想主義者」と呼んでいる性格タイプの子が多いです。このタイプは、世の中の不正や不平等に敏感です。自分がルールを守るのはもちろん、人にもルールを守ってもらいたいと感じます。そうしないと世の中で正義が実現されることはないからです。自分の中にいつも理想があって、その理想の実現のためにまじめに努力します。

僕が(私が)守らなければならない!

こういう性格の子にとっては、親が酒乱であったり、家が貧困であったり、暴力が日常茶飯事であったりすることには、激しい痛みや悲しみが伴います。時に、母親や兄弟姉妹を守らなければいけないと感じます。

家族のバランスを保とうとする!

このタイプは、「英雄」というとちょっと大げさですが、「優等生」「良い子」「偉い子」を演じることによってその家庭で生き延びようとします。自分が「優秀な子」であり「しっかりした子」であることによって、親から褒められるように振る舞います。自分がこのように評価されることで両親を喜ばせ、その見返りに家庭を少しでも生きやすい安定した場所にしようと必死に演じます。特に母親から頼られ信頼される事によって家族のバランスを保とうとするのです。

完全主義者?!

しかし、当座の目標を達成しても、すぐに更に上を期待されてしまう為、心が休まることはありません。安心できないのは、家族が分裂し家庭が崩壊することを常に恐れているからです。いつも「自分は完璧にやり遂げないといけない」、「完全な結果を出さないといけない」と思い詰めているのです。

評価基準を持てない!

結局のところ自分で自分を正当に評価することが出来ません。評価はいつも親がするからです。自分の中に自分を評価する基準がないのに、あるいはその基準を持てないからこそ、正義感と完全主義の塊であるかのように見えます。それなのに、結果としてやってくるのは不全感(十分にやることが出来なかった!)や失敗感(また失敗してしまった!)のみで、結局のところ安心できないまま常に苦しみ続けることになります。

幼くして老人のよう!

この苦しみに耐え続けるために、ヒーロー(ヒロイン)は早熟であり、幼くして老人のような印象を与えることがあります。ヒーローはこの意味で「小さな大人」になって生き残ろうとするのです。

 

「リトル ナース(小さな看護者)」

「リトル ナース(小さな看護者)」として生き延びようとするのは、「自己犠牲を厭わない献身の人」と私が呼ぶ性格タイプです。もともと親切でお人好しで世話好きです。ほとんど誰彼構わず助けてあげたいと望んでいます。ケア テイカー(Care Taker:世話する人)とも呼ばれます。いつも自分自身の事は後回しになりがちで、いつも人の気持ちに寄り添い、自分を犠牲にしてでも相手を喜ばせたいと望んでいます。

献身に喜びを見出す!

家族や家庭に不幸が訪れると、一見、元気づいて、家族の世話をしようとします。時には、親に慰めの言葉をかけ励まし、親の代わりを自分が果たそうとします。その犠牲的な働きぶりから、実際、生きがいを見出して献身に喜びを見出しているかのようです。

家族間の調整役

世話を焼くことで家の中の問題を何とか解決しようと奔走します。「優しい子」、「思いやりのある子」として、幼い兄弟姉妹の世話をするばかりでなく、親の愚痴を聞いたり手伝ったり、何かと家事を見ようとします。家庭内の混乱の中で家族間の調整役を必死でこなします。自身の事はそっちのけで、家族のために何かをしようと常に考えているのです。幼くして健気(ケナゲ)です。

外見とは違う内面

その外見とは裏腹に、心の奥底では自分に自信がなく、常に周囲から責められているように感じます。実際に自分自身を責め、「まだ駄目だ、まだ駄目だ」と自分を鞭打つのです。本当は、自我を見失っている状態で、自分自身の正当な欲求や自然な感情を認めることが出来ません。家族の一人一人から頼りにされ、依存されることで、少しでも家族の平和を保とうとします。

小さな親を演じている!

女の子に多いかと言うと決してそういうことはありません。男の子でもこういう役回りを演じて生き残りを図っている場合は少なくありません。リトルナースはこの意味で「小さな親」を演じることで生き延びようとするのです。

 

次回は、「ピエロ(道化師)」と「ロスト・ワン(Lost One)」を扱います。お楽しみに!

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