不登校になりやすい性格ってあるの?=その3=

 

小山脈

その1では「思考回路型性格タイプ」を、その2では「自分らしさにこだわり抜く性格タイプ」を扱いました。不登校の性格タイプではその1が一番多く「大山脈」と言えます。これに比べてその2は「中山脈」と言って良いでしょうか。この伝でいくと今回のその3「平和を願い続ける性格タイプ」は「小山脈」となりましょうか。

このタイプも、大きな三つの分類では「遊離型(他者との距離を取ろうとする)」に属します。

もてるタイプ

外見的にのんびりした性格のように見えますし、事実、人との関係では控えめで周りに合わせますから、人を安心させる力があります。人柄がとても良いので上からも下からも好かれますし、先生などからも可愛がられることが多いです。言わば「持てるタイプ」と言えると思います。しかし、対人関係はどちらかというと受け身です。

このタイプの子どもは幼稚園/保育園時代からちょっと複雑な動きを見せることがあります。園の下駄箱で鋭く園庭を見渡し、ある時はそのまま園庭に遊びに出るかと思えば、ある時には教室に向かいます。親から見ると、園庭に直接行くか、園庭ではなく教室に行くかをどういう基準で決めているのか見当が付きません。本当に注意深く観察していると、実は、「嫌いな子」が園庭に居る時には上履きに履き替えて教室に向かい、その子の姿が園庭に見えないと履き替えずにそのまま園庭に行って遊ぶことにするのです。そして、そういう自分の判断基準を幼くとも明確に理解しているにもかかわらず、それを親に説明しようとはしません。

これだけ徹底して「嫌いな子」を避けているわけですから、その子と仲が悪いかというと必ずしもそうではなく、避けられている方の子は「平和を願い続ける性格タイプ」の子をとても好いているという場合が少なくありません。ハグしたりほっぺに触ったりしたがるのですが、それがこのタイプには、距離が近すぎて煩わしいし、うっとうしいのです。表面的にはにこにこしていますが、触られたくないし静かに放っておいてほしいのです。「やめて!」と言えばいいのですが、それが言えません。つまり、「嫌いだから遊びたくない」と言わなければいけない状況から徹底して逃げるという行動をとります。

嫌な状況から逃げてばかりいるわけですからさぞかしストレスになるだろうと思うかもしれませんが、一定の限界があってそれを越えなければ、ストレスに苦しむそぶりは見せません。嫌なことがあっても、このタイプは本当に大切なことが心の中や想像の世界で起こりますから、ストレスが限界内であれば、現実世界から離れて、自分の心の中で十分に楽しむことが出来るのです。

ある父親の話

このタイプの子を持つお父さんが相談に見えて、しみじみと語ってくれました。

その家族はスキー一家で毎年冬には二度三度とスキー場に行きます。その女の子は、「よし、これからリフトに乗っていざ滑ろう」という時に、「おしっこ」と言うのだそうです。せっかく履いたばかりのスキーを脱がせてトイレに連れていくとなかなか出てきません。やっと出て来てまたスキーをはかせて、お父さんはその子を膝にのせてリフトに乗ります。その子はリフトの終点からレストハウスのある麓まで、それなりに楽しそうに滑り降ります。お父さんが当然のように、もう一度リフト乗り場まで行くと、その子はまた「おしっこ」と。「さっき行ったばかりだけど、またおしっこなの?」と聞くと、にこにこしながら大きくうなずきます。仕方なく、またレストハウスに戻りトイレに連れていきます。また、なかなか戻って来ません。お父さんは外に出てタバコを一服し、さらにトイレの出口でその子が出てくるのを待ちますが、まだ出てきません。たまらずトイレの出口から中に向かってその子の名前を呼びます。「○○、まだ?」。返事はありません。ふとレストハウスの中ほどを眺めると、何とわが娘が土産物売り場で何やら嬉しそうに商品を手に取って眺めています。「なんだ、出ていたのか。早く滑りに行こう」と言うと、「パパ、お腹減ったね」と言います。「じゃあ、もう一本滑ったらお昼にしよう」と父親がいうと、その子は、「○○(自分)がここでママとニイニイを待っていてあげる」と言うのです。

要するに、その子の本音は「お外は寒いしスキーはもう嫌。滑りに行きたくない」ということなのです。でも、実際にそう言って駄々をこねると、お父さんとの間の平和をこわす事になるので、その事態を避けられるような配慮をして、こういう言動をとっているのです。

お父さんの嘆きは続きます。

「今回中2で、娘が不登校になって何が困ったかというと、なぜ学校に行かないのか、その理由を少しも説明してくれないということです。私は、自分が父親として娘とはとても仲が良いと自負していました。ところが、何をどう聞いても泣いているばかりでさっぱり埒があきません。娘は成績だって良いし、音楽だって、美術だって、体育だって人並み以上にこなします。友達だって多いし、映画や演劇にも興味があって人一倍、感受性も豊かなのではないかと思います。ところが何としても、学校に行かないことについては口も心も開いてくれません。そして、毎日毎日、寝てばかりです。横になっているのではなく、ほとんど一日中まどろんでいるというか、真っ白な顔をして実際に眠っているのです」。

このタイプの子どもは、実際、思春期に「起立性調節障害」や「睡眠障害」を起こすことが多いように思います。

見ざる言わざる聞かざる

実際にこのタイプは、自分自身に「目覚めているかそれとも眠っているか」、「緊張しているかそれともリラックスしているか」、「平和を感じているかそれとも痛みを感じているか」、それぞれどちらか一方の状態であることが少なくありません。

対人関係でつまずくと、人との関わりから遠ざかります。人に対してよそよそしくなり軽薄で冷たくなることで、繋がりから発生するストレスを出来るだけ感じないように、自らを守ろうとするのです。つまり、バランスが崩れると自分自身を平和に保つために、自分の中のあらゆるものを鈍く不活発にし、「見ざる、聞かざる、言わざる」状態になるのです。こうなると、今まで見えなかった強情さ、つまり干渉されることをかたくなに拒否する頑固さが顔を出します。それどころか、悪くすると、「何も感じない、何も考えない」というマヒ状態になることさえあり得ます。

このタイプにとって誰かと対決したり、自己主張したりしなければいけない事態というのは恐ろしいことなのです。

このタイプもいったん不登校になると元気を取り戻すのは容易ではありません。逃げて逃げて逃げまくりながら、それでもたまり続けたストレスがものすごい重みとなって、他ならぬそのストレスのはけ口を塞いでしまったかのようです。

言葉を代えるとこのタイプは「真に自分自身を生きる感覚」を見失いやすいのです。この「真に自分自身を生きる感覚」というのは「自分らしさ(アイデンティティ)」を見つめるということと切り離すことが出来ません。

例えば、その2で扱った「自分らしさにこだわり抜く性格タイプ」は、自分らしさを見つめて痛みや苦しみから目を背けない特徴がありました。これは言い換えれば「真に自分自身を生きる感覚」を大切にしているということです。これに対して「平和を願い続ける性格タイプ」は自分自身から逃げてしまい自分自身を見つめることを避けるのです。つまり、苦しかったり嫌な思いをしたりしてまで「自分自身でいること」に価値を見出さないと言って良いかもしれません。だから、ある限界内ではたいてい譲歩してしまうのです。そして、その限界を超えて譲歩してしまった時にやってくるのが、反抗や対決ではなく「不登校」ということになります。

 眠っている力

カウンセリングでは、本来このタイプが持っている「力の感覚」を思い出してもらう様に努めます。「力の感覚」って何?こういう性格タイプに「力」なんてあるの?と疑問に思われるかもしれません。しかし実際、このタイプは、本来、他の性格タイプが持っているあらゆる「力」を持っています。思考回路型性格タイプが持っている「知性(考える力)」、自分らしさにこだわり抜く性格タイプが持っている「創造性(美的センス)」、冒険を楽しむ「好奇心」、人に対して尽くす「誠実さ」、高い「理想」、人を受け入れる「寛容」、そして何より人に平和をもたらしあらゆる困難を楽々と運ぶ大河のような「力」です。

いろいろ伝記を読んでみますと、例えば、南アフリカで黒人初の大統領となったネルソン マンデラ氏やインドをイギリスの植民地支配から救った不服従運動のガンジーがこのタイプではなかっただろうかと思います。

要するにこのタイプが本来持っている「自分らしさ(アイデンティティ)」をしっかりとつかみ直してもらい、自らが持てるものを総動員すれば、現実にしっかりと取り組み、その取り組みを最後まで貫くことが出来るのだと知ってもらうのです。そしてその時の感覚こそが「真に自分自身を生きる感覚」なのだと悟ってもらうのです。これは、自分自身にもう一度目覚めるということと同じです。

自己実現の結果、このタイプは落ち着きを取り戻し、穏やかでいながらダイナミックな存在感をもって、しっかり世界とつながることが出来るようになります。

 

 

さて、これで不登校になりやすい三つの性格タイプについて書きました。

注意しなければならないのは、不登校になるのは何もこの三つのタイプだけという訳ではないことです。もちろん他の性格タイプも不登校になり得ます。言い換えれば、人間だれしも「命の泉」が枯れ果ててしまう時があるということになります。

そして、性格タイプによって「どのように呼び水を注ぐか」それぞれ異なりますし、「命の泉」がよみがえるまでの時間も異なります。これさえやれば不登校は100%治る式の克服方法というのはありません。しかし、間違いなく言えるのは、不登校は克服可能だということです。

なにより忘れたくないのは、不登校は何か理由があってご家庭を訪れたということです。

不登校を克服した家庭は、以前よりずっと幸せそうに見えます。家族の一人一人が分かり合い絆を強めて生きることが出来るようになるからでしょう。

親御さんのみなさま、皆様が自分らしさを大切にしながら、頑張りすぎないように頑張って行けますように、いつも声援をお送りしています。

  • カテゴリー: 未分類 |
  • 投稿日: 2015年03月11日 |

コメント

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