不登校マップB群の「起立性調節障害」、意外や意外の後半です!

こうして彼女は「起立性調節障害」を発症したのですが、上に書き出した彼女のストレスを「これでは病気になっても仕方がない」と感じられる方もいらっしゃるでしょう。他方では、「これ位の事はどの中学生にもあるのに」、とお感じになった方もいらっしゃるのではないでしょうか。

=夫婦仲の悪さ=

私はどちらかと言うと後者の方で、これら日常の大きなストレスのほかにも何かあるのではないかと思ったのです。案の定、彼女はさらに大きな精神的な負担に苦しんでいました。それはお父さんお母さんの仲の悪さでした。彼女に依りますと「もう思い出せないくらい昔から怖い夢を見ることがあって、その夢を見た日はたいてい学校に行けなかった」との事でした。その夢はだいたいいつも同じ夢で「石造りの大きな橋が両端から崩れてしまい、橋の真ん中に立っている彼女はどちらにも逃げられずに谷底に落ちてしまうところで目が覚める」というものでした。

=根雪のように凍り付いたストレスとは?!=

これは言うまでもなく、両親の関係の破綻(離婚)を恐れる夢で、小学校時代からの体調不良はこれが原因だったのでしょう。そればかりか、つまらないことで夫婦喧嘩を繰り返す家庭の環境が、彼女にとって大きなストレスとして根雪のように横たわっていたものと思われます。その上に、中学に入ってからの様々なストレスが加わって、とうとう心身のバランスを崩してしまったのでした。

=核家族では致命的になりかねない夫婦げんか=

ここで付け加えますと、現代の標準的な共働き家庭では特に「夫婦仲の良さ」が大切です。二世代三世代の大家族であれば、「夫婦のゆがみ」はお祖父ちゃんお祖母ちゃんの安定感でカバーされたりしやすいのですが、今は核家族ですから、夫婦仲が悪いとそれは子どもへの致命的な悪影響となることが少なくありません。省みて、子どもの前で平気で怒鳴り合っていたり、逆に氷のように冷たい関係だったりと言うことはありませんか?子どもの健全な成長には「仲の良いお父さんとお母さん」が必要です。これさえあれば、共働きだからと言って子どもの心身の成長に悪影響だということはありません。

=性格タイプの影響=

不登校には、不登校になりやすい性格タイプと言うのがあります。「起立性調節障害」はどうでしょうか?私の眼にはそれほどはっきりと「起立性調節障害」になりやすい性格タイプがあるとは見えませんが、やはり「人との間に距離を置こうとする遊離型で多いような気はします。ちなみに上の例で取り上げた中学生は、性格タイプで言うと、やはり遊離型の「心の中で遊ぶ平和主義者」でした。でも、自己主張が出来るタイプでも、協調型のタイプでも、「起立性調節障害」は起きます。不登校と同じです。やはり、どういうストレスをどの程度に抱え込んでいるか、そして心身の成長がどの段階なのかということがこの病気の発症に密接に関係しているのでしょう。

=子どものストレスを見極めるポイント

子ども同士友達同士の人間関係に変化はないか?

これは当然いつも変化しているのですから、子どもの「友達への思い」を訊くよりも、最近の「友達の様子」を訊いてみると、案外、この辺りが分かるかも知れません。

②クラス(学級)の雰囲気は平和で友好的か?

学級崩壊とは行かないまでも、クラス内にカースト(≒階級制度)が出来ていたりすると、クラスの中の正義や公平性は既に失われています。注意が必要です。

③子どもの先生に対する信頼は揺らいでいないだろうか?

例えば、「あの先生はひいきだ」、と子どもが言ったとすれば、その先生に対する信頼は既に失われているのです。注意が必要です。

③家庭で子どもが密かに孤独を感じている様なことはないだろうか?

子どもは、自分が孤独なのか否かが、必ずしも、分かっていないのです。時には、「あなた寂しくない?大丈夫?」、と聞いて上げることも必要かも知れません。

④親として子どもの不平不満を聞けているだろうか?

何でも子どもの要求をきくと言うことでは、もちろん、ありません。不平不満を、「そうか、そうだったのか、ゴメンね」と聞いて上げるだけで、子どものストレスを解消する力があるかも知れないのです。

⑤兄弟姉妹の人間関係に異変はないか?

子どもが自分の兄弟姉妹に対して批判的になるという事は大切な成長のポイントなのです。「あなたが言っていることはお母さん(お父さん)も正しいと思っているよ」と同意して上げる事が大切です。

⑥子どもの前で夫婦喧嘩をしていないか?!

ちょっと古風かも知れないですが、子どもの前では、「妻は夫を立て、夫は妻に感謝し思い遣る」、というお互いの優しさが必要では?これさえあれば、子どもの居ないときに、妻が夫にたてつき叱り言うことをきかせるというのは、日本の伝統の中で常にあったことなのです。

=起立性調節障害の予後=

この病気の回復期には、やはり、

・心身の不調が続いている間は、登校はあきらめて十分にリラックスして学校を休ませること

・なるべく朝から起きて多少とも運動し、夜は早めに休むなど「概日リズム」を守って生活する事(とくに、陽のあるうちに日光を浴びることは大切)

・部活や塾など学校生活の負担を減らして学校復帰を促す事

・何よりお子さんが起きられるようになったら、なるべくコミニケーションを取ってお子さんのストレスを少しでも軽減する事

・なるべくゲームをさせない事(電磁波の悪影響は意外に大きいと言われます。大人には影響がなくても成長途上の子どもの心身には百害あって一利なしです)。

等々が大切です。

=すっきりサクッとは治らない?!=

この病気はストレスさえ軽減できれば快方に向かう病気です。でも、すっきりサクッと治ることは少ないように思います。やはり、自律神経の調子が実際に狂っていることと、ストレスを短期間に完全になくすというのは難しいからでしょう。

ちなみに、例に挙げた中2の女子は、お正月休み明けから久々に登校し、その後、1週間に1日ないし2日休むペースで春休みに突入、この休み期間中にクラスの友人とディズニーランドに遊びに行くことが出来て自信を付けましたが、中3の4月現在もまだ一か月に一二回は欠席して十分に休息するという状況です。部活は休部、塾は止めました。

=ご両親の反省の弁=

お父さん:夫婦仲(の悪さ)が子どもにこれほどの悪影響があったとは思いもよらなかった。妻がくどくどと言い立ててくるのはもう当たり前で、怒鳴って黙らせることしか考えていませんでした。思い返せば、父親としてまったくなっていなかった。子どもの物心つくころから家庭とは言えない状況が続いてきて、これでは子どもがおかしくなるのも無理はないと悟りました。かわいそうなことをしてしまった。これからはどんなことがあっても娘の前で声を荒げるようなことはしないと自らに誓いました。

お母さん:私の人生の中でこんなに辛いことはなかった。一時は娘と心中しようかと思いました。あの青白い顔でねむり続ける娘の顔はもう絶対に見たくありません。私の心には会社をリストラになった夫への不満がいつも渦巻いていて、どうしても夫を許すことが出来なかった。それを責め続ける気持ちをどうしたらいいのか分かりませんでした。これは、私への天罰だと思っています。夫の気持ちを思いやることが出来なかったし、娘にも夫の悪口ばかり言ってきました。元気になった娘の姿を見て、私は幸せだったことに気が付きました。これからもこの幸せに感謝していきたいと思います。

=「気長に待とう」ではダメ?!=

不登校全般に言えることですが、「治癒までに長期間かかる病気だから気長に待とう」では、この起立性調節障害はいつになっても良くならないということがあり得ます。「家庭で出来る対処法」があるので、積極的に働きかけを行いたいですね。子どもにどのように向き合うか、子どもをどのように理解するか、どういうタイミングでどういう風に働きかけを行うか、そして、どのように家庭のルールを決め、子どもにもそれを分担してもらうか(つまり躾けですね)、こういう働きかけは、必ず、学校復帰を早めます。でも、くれぐれも厳しすぎないように!!

ぜひ、頑張ってやってみたいですね。

以上

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