不登校マップB群の代表的な疾患「起立性調節障害」前半です。

不登校の原因のひとつに「起立性調節障害」というのがあります。

=不登校マップ=

不登校マップhttp://www.kagayake.org/sp/fmap.html で言うとB群に属します。B群と言うのは、心の病気のA群と心理的な問題のC群の間にある不登校です。このB群には他に「過敏性腸症候群」と呼ばれるお腹の不調などがありますけれども、不登校という事態になってしまうのはこの「起立性調節障害」のほうがずっと多いです。このB群の7割が「起立性調節障害」が原因で不登校になると言われています。

=「朝、起きれない」と言う言葉=

自律神経の調子が狂う病気で、目が覚めない、起きると目眩がする、気持ちが悪い、頭痛がするなど症状は多様ですが、ほとんどに共通しているのは「朝、起きれない」と言う言葉です。子どもの年齢層では早い子だと小学校4年生くらいから、遅い子どもさんだと高校に入ってからかかったという話も聞いたことがあります。中心になるのは中学生です。「朝、起きれない」と言って学校を休むようなことが続いたらまずこの病気を疑う必要があるでしょう。

=自律神経の不調?=

実は、この病気、男女の別なく身体の成長と関係があって、思春期を迎える子の半分以上がかかるのだそうです。朝起きる時にふらついたり、座っている状態から急に立ち上がったり、歩き出したりすると目まいがしたり、そういう症状を感じる(自覚がある)という子は中学生の半数以上と言う調査があります。でも、このうち長期にわたり不登校状態になるのは、自覚症状のある子どもの1パーセント未満なのではないかと思います。こういう自覚症状があるのに、平気でスポーツ部活で頑張っている子も少なくありません。

では、何が明暗を分けるのでしょうか?

=ベテラン医師が強調する「概日(ガイジツ)リズム」の重要性=

これは私の推測ですが、不登校になるほどに「起立性調節障害」を悪くしてしまう子どもは、男女ともに、頭が良く、敏感で、神経質な子に多いように感じます。不登校の期間は短くても半年以上になることが多いです。長くなると1年も2年も治らないという例を聞きます。

病院に行くと治るかというと、それが当てに出来ないのがこの病気の困ったところです。先ずはこの病気に効く薬がないのです。一般的には「漢方薬」が処方されることが多いのですが、良い先生ほど生活指導で治そうとします。「あさ、頑張って起きて陽の光を浴びなさい」「昼間、出来るだけ起きて過ごしなさい」「多少気持ちが悪くても頑張って昼間、散歩に行きなさい」「ゲームばかりやっているのは良くない」「頑張って昼間起きていたら、夜は早めに寝なさい」と言う具合です。

=医師とよく相談することが大切!=

朝起きて陽の光の中で活動的に過ごし、日暮れとともに活動を減らしていって十分な睡眠をとるという事を「概日(ガイジツ)リズム」と言います。その概日リズムをしっかりと取って生活しなさいと言うのが、ベテラン医師の生活指導です。

それで効かないと、子どもの親にせがまれる形で医師が出す薬は、「抗不安剤」や「睡眠導入剤」などですが、私の観察に依ると、逆に症状が悪くなることが多いような気がします。医師とよく相談することが大切です。

=症状が重かったお子さんの例=

この病気の背景にはストレスが関わっていることがほとんどです。

ここで、中2でこの病気にかかった女の子の例を詳しくご紹介します(ご本人とご両親の了解を頂いています)。

このお子さんは中2の4月下旬から「あさ、起きれない」と訴え、学校を休み始めました。小学校低学年の頃から月に一回程度、体調不良を訴えて学校を休むことがあったが、中1の時にはお休みは2回しかなく快調だったとのお話でした。

5月の連休明けには何とか一日おき、あるいは二日おきに登校して、登校すると部活まで頑張って帰宅するのですが、家に帰るとほとんどベッドに倒れこむように寝てしまい、翌朝になっても起きられないのはもちろん、24時間、あるいは48時間も眠り続けるような状態になりました。これが病気の始まりです。

=何度も言われる「生活指導」=

心配したご両親(共働き)は仕事を休んで代わる代わる小児科専門の大きな病院に何回も連れて行って検査を受けました。お医者様の診断は「起立性調節障害」で、薬は処方せず、その子に、熱心に生活リズムの大切さを教え聞かせたそうです。繰り返しになりますが、曰く、「あさ、頑張って起きて陽の光を浴びなさい」「昼間、出来るだけ起きて過ごしなさい」「多少気持ちが悪くても頑張って昼間、散歩に行きなさい」「ゲームばかりやっているのは良くない」「頑張って昼間起きていたら、夜は早めに寝なさい」と言う具合です。

=「あしたは学校行くから!」=

しかし、その子はこういう指導を全く守ることが出来ず、起きられると時間に関わらず残り物のご飯をお腹いっぱい食べ、お風呂に長時間(3~4時間)つかり、出てくると楽しそうにゲームを始め、「あしたはこのまま起きていて学校に行くから」と言うのですが、朝は全く起きられず、24時間単位でうつらうつらしているという状態が続きました。

=効かなかった処方薬=

さらに心配した親が主治医に病状を訴えますと、漢方薬と「抗不安剤」が処方されました。両親は、朝夕、お子さんを無理やり起こして、処方された薬を服用させました。ところが、症状はさらに悪くなり、全く起きられない状態が続き、酷い時にはまるまる4日間、白っぽい顔で寝続ける状態となりました。子ども部屋のある2階にはトイレがないため、階下に降りる階段で転倒して気を失って救急車を呼んだこともありました。

=夏休みが良いきっかけになる!?=

主治医の話では「夏休みがひとつのいいきっかけになる、学校はお休みになるから外出しやすいし、友達とも遊びやすい、それに家族旅行に行くなどして昼間の活動量を増やせるから」と言う話でしたが、この子の場合は夏休み中も全く軽快する兆しは見えず、そのまま秋学期に突入してしまいました。

=「学校に行く必要はない」という声かけ=

私のところに相談があったのは、9月中旬でしたが、私は「お子さんにはしばらく学校に行く必要はないと繰り返し声をかけて下さい」とご両親にお願いしました。同時に主治医に薬の服用を止められないか相談してくださいとお願いしました。これには、すぐに主治医のOKが出ました。

=積みあがったストレス=

10月に入ってようやく始めたカウンセリングでは彼女のストレスが次々に明らかになりました。

・中学受験したかったが学力が追い付かず、受験をあきらめざるを得なかった。

・進学した公立中は荒れていて、なかなか友人に恵まれなかった。

・私立に進学した小学生時代の友人達からくる「ライン」に悩まされた

・入った部活はほとんど休みがなく負担が大きかった

・勉強時間が取れず、中2になってますます勉強の遅れがプレッシャーになった

・塾に入ったが全くの逆効果で、宿題が増え睡眠時間が減った

・毎日、何一つ満足にこなしきれない中でストレスが積みあがった

こうして彼女は「起立性調節障害」を発症したのですが、上に書き出した彼女のストレスを「これでは病気になっても仕方がない」と感じられる方もいらっしゃるでしょう。他方では、「これ位の事はどの中学生にもあるのに」、とお感じになった方もいらっしゃるのではないでしょうか。    前半はここまで、後半に続きます。 g; \l

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