機能不全家庭を生き延びたAC第4回「ロスト ワン(迷子)」

=ロスト・ワン(迷子)=

前回「ピエロ」の次、今回はロスト・ワン(迷子)を見ていきますが、「ロスト・チャイルド」とか、「居なくなった子」と呼ばれることもあります。

居ないふりをして、家族の争いの火の粉が自分に降りかかるのを防ごうとするのです。そのためには、自分が受けるべき注目や愛情を他の兄弟姉妹に回すことも厭(イト)いません。他の兄弟姉妹への思いやりと見えなくもないのですが、自分から注意をそらし、言わば居なくなったように存在感を希薄にして、家族のバランスを保とうとするのです。戦場の上空を飛んでも発見されないステルス戦闘機に似ているかもしれません。

=見えてこない意図=

ロストワンは非常に思慮深いのです。ところが、その思いを言動として表に出した途端に、家族の平和は崩れると固く信じているため、外見的には、自分が居なくても誰も心配しないような存在であることを目指します。常に無口で陰気な傍観者のように、優柔不断で行き当たりばったり、いちばん目立たない態度をとるのです。家族には、その子の意図は見えないのですが、「ああ、あの子はいつもそうだから」と気にも留めずに、ついついやり過ごしてしまいます。逆に、そのように見過ごされるように、必要最小限のことも言葉にしないで、まわりの解釈に身を任せるように務めます。

=痛切な孤独感=

そのおかげで、家族は「あの子は放っておいても大丈夫」と安心し切っているか、そうでなくとも、いくら訊いても本人の意思が出てこないので、また、家庭内にもわざわざ訊いて確かめるような余裕もないので、慣れっこになってしまうのです。しかし、本人の内面は「自分はいつだって重要でない」「家族の一員とは言えない」「どうでもいい存在だ」と痛切な孤独感を味わっています。自分が孤独で居ることに耐えないと家族の平和はやってこないと信じているかのようです。ですから、いくら孤独でも泣き言をいうことはありません。この孤独に耐える力ゆえに精神的な自立は早く、内面的には自分の意志に敏感で、そうは見えないのですが、決断力にも富んでいます。無表情な外見に潜んでいるのは悲壮な覚悟だと言って良いでしょう。

=「ロストワン(迷子)」になり易い性格タイプ=

ロストワンになりやすい性格タイプは、「人がうっとうしい思考回路型」です。このタイプは、「自分には能力があり、とても有能でありたい」と無意識に望んでいます。ですから、逆に、「自分が無力で、役に立たず、無能である」ことを非常に恐れています。それなのに、自分が日々生きなければならない家庭は、混乱や暴力に満ちており、何か良いやり方を見つけて平和に過ごすことは、自分には全く思いも及ばない場所だと言って良いでしょう。自分の意思や意図、感情を表現しようものなら、それは全く思いがけない結果として、混乱や暴力になって返ってくると信じているのです。したがって、このタイプは、自分が一番恐れている状態、つまり「自分が無力で、役に立たず、無能である」状態に自らを押さえ込んで、「自分はこの混乱と暴力の現場にはまったく関係がありません」という態度を取ろうとするのです。

=他の性格タイプでもあり得る!=

他の性格タイプでもロストワンになって機能不全家庭を生き延びようとする場合があります。同じように、「居なくなり」、自分が衝突や暴力の原因にならないようにするのです。家庭の状況が過酷であればあるほど、「自己主張型」や「協調型」の性格タイプでもロストワンを演じて生き延びようとします。もともとの性格タイプが見えなくなるほど、その性格的な屈折は強烈です。

=絶望と隣り合わせ!=

こうした内面と外見の矛盾に苦しみながら、常に「自分は見捨てられた存在で、誰も自分の心の傷を理解しない」と自分をあきらめようとしています。ロストワンはこの意味で、絶望と隣り合わせの「永遠の迷子」のような存在を演じて生き残ろうとするのです。

さて、次回は「プリンス・プリンセス(命なき人形)」を解説します。

◇NPO輝け元気!の無料相談

◇所在地:横浜市青葉区美しが丘西

◇最寄り駅:東急田園都市線(横浜市営地下鉄)あざみ野駅、小田急線新百合ヶ丘駅

◇遠方の方にはオンライン(電話)相談もあります。

◇メール:daimon@kagayake.org

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

You may use these HTML tags and attributes: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong>

*