B群とC群の「心理的な不登校」について考えます。

今日は、A群からF群までの不登校のうち、B群C群の不登校について考えます。

B群C群の不登校は、病気でもないし障害でもない不登校で最も数は多いかも知れません。分かっていなくてはいけないのが、人間の心の不思議さ、切なさです。

例えば、こういう例を考えてみて下さい。熱烈な恋愛の末、結納も済み、結婚式の日取りも決まった女性がいたとします。ところが、その婚約者がなんと交通事故で亡くなってしまいました。女性は、心に大変に大きな打撃を受け、その日から茫然自失となりました。

その知らせの翌日にはベッドから下りることが出来なくなりました。どう頑張っても、手足が動かず、歩くことはもちろん立ち上がることさえ出来なくなってしまったのです。心に受けた打撃が「手足が動かない」という症状に転換されたと考えることが出来ます。これを「転換性障害」と言います。

転換性障害には、その女性を助ける面もあるのです。それは、「手足が動かないのだから」お通夜にも、お葬式にも、初七日にも、行くことは出来ない。つまり、行かなくて済む、という事です。彼女にはこういう悲しい「別れ」に立ち会わなくて済むという一種の「救い」が生じたことになります。

この「救い」のことを「疾病利得(シッペイリトク)」と言います。さらに、初七日も終わった頃、その女性が急に歩けるようになって、「結婚式で使う髪飾りを買いにデパートに行って来ます」と母親に告げたとしましょう。母親は驚いて思わず「〇〇さんは亡くなってしまったのよ」と言います。

ところが女性は「冗談もいい加減にしてよ、お母さん」と言って出かけて行きました。婚約者が亡くなった事を心の奥底に押し込んで否認、つまり無かった事にしてしまったのです。これを「解離性障害」と言います。この場合は「婚約者が事故で亡くなった」という誰にも明らかな原因があります。

「転換性障害」も「解離性障害」も、親はもちろん本人にさえ「原因」が分からないままに起こることがあります。朝、目が覚めない、無理に起き上がると目眩がする、起きていようとすると酷い頭痛がするなどして、病院へ行くと「起立性調節障害」などと診断され、不登校になります。これがB群の「心理的な原因で起こる病気による不登校」です。

要するに自律神経の失調で起こる病気ですが、そのために「朝起きられない」という症状が起こります。これには「学校に行かなくて良い」という救い、つまり「疾病利得」を伴います。原因がわからない転換性障害、これを「身体表現性障害」と呼びます。「私は学校には行けない」という心の叫びなのです。

この病気には「薬が効かない」という特徴があります。頭が痛いからと頭痛薬が出ても、ほとんど効きません。カウンセリングで固く閉ざされた心を紐解いていくと二重三重に重なったストレスが見えてきます。学校、クラス、部活動、塾、それに家庭でのストレスが重なっている場合などです。

これらのストレスを紐解いて本人がひとつひとつ納得していくと次第に症状は和らいでいきます。婚約者を亡くした女性の話に戻りますと、茫然自失で体が動かなくなるというのは、「こころ」が正常に働かない、つまり障害された姿です。本来は耐えがたい痛みと悲しみに苦しむ姿こそが正常なのです。この女性が転換性障害を起こさず、婚約者を亡くした痛みと悲しみに苦しんでいるとしましょう。その痛みと苦しみの為に学校や職場に行けなくなったとしましょう。それが、C群の「心理的な不登校」です。

B群の起立性調節障害等の身体表現性障害で起こる不登校の場合は登校させずに、まずはゆっくりと休ませる必要があります。それと同じで、C群の不登校の場合にも登校させずに「こころ」を休ませてあげなくてはいけません。

C群の不登校は、その原因に幾重にも重なったストレスがあって「こころ」が正常に働かなくなってしまったと見ると、正しい対処の仕方が見えて来ます。心しなくてはいけないのは子どもの場合、何がストレスになっているのか自覚できない場合がほとんどだという事です。小学生だけでなく中高生でも、場合によっては大学生になっても何が精神的な打撃になったのか、何が過重なストレスになっているのか、分からないのがむしろ普通です。逆に言うと、分からないからこそ「こころ」が悲鳴を上げて「不登校」が起きたのだと考えねばなりません。

私の言い方では、「命の泉」が涸れ果ててしまった状態です。ほんらい湧き出ていなくてはいけないはずの「元気」と「喜び」がまったく出てこないのです。

難しいのは、自分が曝されたストレスが自覚できればすぐに自律神経の失調が治る、また精神的な打撃が癒されると言うものではないことです。ストレス源が明らかになっていく度に悪くなったり良くなったりを繰り返しながら段々と治っていきます。くだんの女性が喪失体験を克服していく時に、何度も大きな悲しみに直面しなければならないのと同じなのです。

 

  • カテゴリー: 不登校 |
  • 投稿日: 2014年11月13日 |

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