子どもはどのように機能不全家庭を生き抜くか?”その2″

前回は、「ヒーロー(ヒロイン)」と「リトルナース(小さな看護者)」を説明しました。今回は、「ピエロ(道化師)」と「ロスト・ワン(迷子)」を扱います。家庭の過酷さを耐え忍んで少しでも生きやすくするために、子どもは様々な役柄を演じます。ご自分の子供時代をぜひ思い起こしてください。手繰り寄せる記憶は、きっと、あなたのお子さんを理解する手がかりになるかもしれません。

「ピエロ(道化師)」

マスコットとかクラウンとか呼ばれることもあります。「ひょうきんもの」を演じ、おどけて家族内の緊張を和らげようとします。問題が深刻化しないように、そして、素知らぬ顔で問題を分散させるために、必死でピエロを演じます。

注意をそらそうとする!

家族内に不穏な雰囲気が漂い始めると、それが明瞭な形となって衝突を招いたり、暴力を引き起こしたりしないように、注意を必死にそらそうと動きます。落ち着きの無い行動を繰り返し、多くの場合、その行動の意図は分かりません。子ども本人も親の注意を衝突や暴力の原因からそらすことが出来れば、何でも良いと無意識に思っているからです。その意図が隠されているため、親は「面白い子だ」と肯定的に思っている場合もありますし、「なんて落ち着きのない子だ」と批判的に見ている場合もありますが、実際には、家庭内の衝突や暴力を怖れて、常に情緒不安を抱えていると言って良いでしょう。

ヒステリーを起こす寸前?

家族の緊張を和らげようとするため、いつも家族の笑いと関心の対象になろうとします。それがうまく行かない時には、過度に可愛く子どもっぽい自分をアピールします。「自分は弱くて誰かの保護が必要です!」と叫んでいるように見える時さえあります。こういう時には、実はヒステリーを起こす寸前まで追い詰められていることが少なくありません。

「人をもてなすエンターテイナー」の性格タイプに多い!

性格は「人をもてなすエンターテイナー」の子が、この「ピエロ」を演じることが多いです。対外的に、人当たりが良く人を楽しませる才能に富んでいますが、半面、自己評価は極度に低く、自己愛に欠けています。何故でしょうか?この性格タイプはもともと自己主張が出来るタイプなのですが、自分が家庭の平和の為にいつも心にもないピエロを演じていることを内心、恥じているからなのです。頭の回転が速くユーモアにも優れるので、まわりの賞賛を得やすいのですが、「自分?こんな自分は嫌いだ」と心の中で呟いたりします。

親のペットのような存在?!

常に家族の衝突を恐れ、家族の中で孤独に苦しみ、いつも無力感にさいなまれているのです。ピエロはこの意味で、「親のペットのような存在」を演じて生き残りを図るのです。

 

「ロスト・ワン(迷子)」

「ロスト・チャイルド」とか、「迷子」とか、「居なくなった子」と呼ばれることもあります。居ないふりをして、家族の争いの火の粉が自分に降りかかるのを防ごうとするのです。そのためには、自分が受けるべき注目や愛情を母親や兄弟姉妹に回すことも厭(イト)いません。思いやりと見えなくもないのですが、自分から注意をそらし、言わば居なくなったように存在感を希薄にして、家族のバランスを保とうとするのです。戦場の上空を飛ぶステルス戦闘機に似ているかもしれません。

見えてこない意図

非常に計算深いのですが、ところが、それを言動として表に出した途端に家族の平和は崩れると固く信じているため、外見的には、自分が居なくても誰も心配しないような存在であることを目指します。常に無口で陰気な傍観者のように、優柔不断で行き当たりばったり、いちばん目立たない態度をとるのです。家族には、その子の意図は見えないのですが、「ああ、いつもそうだから」と気にも留めずに、ついついやり過ごしてしまいます。

痛切な孤独感

家族は、「あの子は放っておいても大丈夫」と安心し切っていますが、本人の内面は「自分はいつだって重要でない」「家族の一員とは言えない」「どうでもいい存在だ」と痛切な孤独感を味わっています。自分が孤独で居ることに耐えないと家族の平和はやってこないと信じているかのようです。ですから、いくら孤独でも泣き言をいうことはありません。この孤独に耐える力ゆえに精神的な自立は早く、内面的には自分の意志に敏感で、そうは見えないのですが、決断力にも富んでいます。無表情な外見に潜んでいるのは悲壮な覚悟だと言って良いでしょう。

様々な性格タイプが「ロスト・ワン(迷子)」になる!

ロストワンになりやすいのは、やはり「遊離型」に属する「人がうっとうしい思考回路型」や「心の中で遊ぶ平和主義者」が多いですが、他の性格タイプでもロストワンになって「居なくなり」、自分が衝突や暴力の原因にならないようにします。家庭の状況が過酷であればあるほど、「自己主張型」や「協調型」の性格タイプでもロストワンを演じて生き延びようとします。もともとの性格タイプが見えなくなるほど、その性格的な屈折は強烈です。

絶望と隣り合わせ!

こうした内面と外見の矛盾に苦しみながら、常に「自分は見捨てられた存在で、誰も自分の心の傷を理解しない」と自分をあきらめようとしています。ロストワンはこの意味で、絶望と隣り合わせの「永遠の迷子」のような存在を演じて生き残ろうとするのです。

 

さて、次回は「プリンス・プリンセス(命なき人形)」と「スケープ ゴート(生贄のヒツジ)」を扱って、このシリーズの最後となります。どうぞお楽しみに!

 

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