機能不全家庭・・・・・・・・アダルトチルドレン(AC)のゆりかごPartⅢ

さて、アダルトチルドレンのゆりかごを歩く旅も、いよいよ佳境に入って来たようです。人間の心の不思議さ、そして切なさを手さぐりしながら紐解いていく旅となるでしょう。

 

前回までのところを、少し整理してみましょう。

・「ヒーロー(ヒロイン)」は良き「大人」を演じる

・「リトルナース」は善良な管理者、良き「親」演じる

・「ピエロ」は愉快な「道化師」を演じる

・「ロストワン」は永遠の「迷子」を演じる

・「プリンセス プリンセス」は現実逃避するために命なき「人形」を演じる

・「スケープゴート」は自らを犠牲にして「問題児」を演じる

さて、子どもは「どのように」役回りを選ぶのでしょうか?それは、「機能不全家庭」の要因によって条件が違ってくると言われます。ここでもう一度、PartⅠで扱った、その要因を見ておきましょう。

  1. 親の依存症:アルコール依存症、ギャンブル依存症、薬物依存症、ゲーム依存症
  2. 親の不幸なライフイベント:親の自殺、親の死亡、親の浮気、両親の離婚、親の再婚
  3. 親から子への虐待:子が親から見捨てられる事(ネグレクト)、精神的な虐待、肉体的な虐待、性的な虐待、両親の不和、家庭内の暴力(ドメスティック バイオレンス)、共依存
  4. 家庭の貧困:サラ金地獄、生活困窮、生活苦を伴う家族の病気(難病、介護)、
  5. その他:望まれない出生、不遇な里子体験、親がカルト宗教にのめり込む

「何が役回りを選ばせるのか?」

機能不全家庭になる要因が、①の「親の依存症」の場合には、子どもは「ヒーロー(ヒロイン)」や「ピエロ」を演じるように条件付けられるかもしれません。

同じく、その要因が②の「親の不幸なライフイベント」の場合には、子どもは「リトルナース」や「ロストワン」を演じるように条件付けられるかもしれません。

「親から子への虐待」③が要因の場合には、子どもは「スケープゴート」や「プリンセス プリンセス」を演じるかもしれません。

「家庭の貧困」④が要因の場合には、「リトルナース」や「スケープゴート」を演じるように条件付けられるかもしれません。いえ、「ピエロ」や「ロストワン」、「ヒーロー(ヒロイン)」、あるいは「プリンセス プリンセス」だってあり得るかもしれません。

こうして家庭が機能不全になる要因の一つ一つを吟味していくと、必ずしも、その要因だけで「役回り」の条件付けが決まるということではないと思います。わたしは、基本的にはその子が本来持っている「性格タイプ」が非常に大きな役割を果たしていると思っています。今まで、このブログでは「不登校になりやすい性格ってあるの?」と題して、三つの性格タイプを扱いました。覚えていらっしゃるでしょうか?

ここで、ざっと復習しておきましょう。

その1:「思考回路型性格タイプ」http://kagayake.org/blog/?p=63

その2:「自分らしさにこだわり抜く性格タイプ」http://kagayake.org/blog/?p=68

その3:「平和を願い続ける性格タイプ」http://kagayake.org/blog/?p=84

それぞれにピンバックを付けましたので、ぜひ、それぞれの記事に戻ってもう一度お読みください。

私の観察によりますと、感情に影響されず理路整然と物事を考えたい、いわば人間嫌いの「思考回路型性格タイプ」は、生き延びるためにやむを得ず「ロストワン」を演じる傾向が強いように思えます。たとえば、両親の離婚騒動中に「あなたは望まれて生まれてきた訳ではなかった」と、この性格タイプが言われた場合を想像してください。その言葉を受け止めて感情的になり傷つく代わりに、「そこに居ない」ことにして、生き抜こうとするのではないでしょうか。

次に、ロマンチストで想像力が豊かな「自分らしさにこだわり抜く性格タイプ」は、生き延びるためにやむを得ず自暴自棄となって「スケープゴート」を演じる傾向が強いように思うのです。たとえば、親が何かの依存症で、ずっとネグレクトを受け続けているこのタイプの子どもを考えてください。無視され続けることに耐えられず、いたるところで問題を起こし、親の注意と愛情を自分に引き戻そうとするのではないでしょうか。

最後に、もともと対決を恐れてすぐに譲歩してしまう「平和を願い続ける性格タイプ」は、「プリンセス プリンセス」となって生き延びようとするように思われます。たとえば、親から性的虐待を受けているこのタイプの子どもを考えてください。「これは現実ではない」、あるいは「私は命のない人形だ。だから何も感じない、考えない」と言い聞かせて、生き延びようとするのではないでしょうか。

この三つの性格タイプのほかにも、「役回り」と関係が深い「性格タイプ」がいくつかあります。たとえば、「ヒーロー(ヒロイン)」を演じる傾向が強いのは、「物事を改革し正義を実現したい人」と言う性格タイプが当てはまります。「リトルナース」になりやすいのは、「ナイチンゲール型」と呼ばれる性格タイプです。「エンターテイナー型」と呼ばれる性格タイプは、「ピエロ」に傾きます。この他に、どれにも該当しない、したがって、どの役回りにもなり得る性格タイプが三つほどあります。

ここでは、いくつかの性格タイプには演じやすい「得意な役回り」があるという事を、心に留めてください。

「ひとつだけでは済まない役回り」

ここでもう一つ考えなければいけないのは、子どもは単純にひとつの役回りを演じれば生き延びられるのかと言うと、そうとは限らない事です。いくつもの役回りを状況に応じて使い分けなければいけない場合が少なくありません。

それは、家庭が機能不全に陥る要因が単純ではないからです。たとえば、「両親の離婚 → 生活困窮 → 親のアルコール依存症 → ネグレクト」と言う例では、機能不全家庭の要因が、②親の不幸なライフイベント → ④家庭の貧困 → ①親の依存症 → ③親から子への虐待 と言う具合に、次第に複合していくことになります。この要因が複合していく過程で、子どもはいくつかの「役回り」を演じなければいけない状況が出てきます。上の例でみると、「ロストワン」 → 「リトルナース」 → 「ヒーロー(ヒロイン)」 → 「スケープゴート」 と言うように、です。

兄弟姉妹がある場合には、各人が無意識に分担して一人がひとつないし二つの役回りを演じればいいかもしれません。しかし、一人っ子の場合、状況はあまりにも過酷です。独りで、いくつもの「役回り」を演じるほかはないからです。本当に、あまりにも悲惨です。自分の性格タイプがもともと持っている「得意な役回り」だけで生き延びられるならまだしも、すべての役回りを演じなければ生き残れないとしたら、苦痛ははるかに大きくなることでしょう。こういう状況にその子が、もし適応してしまうと、「多重人格」というパーソナリティ障害を引き起こすと指摘する研究者もいます。

こういう事情があるからこそ、アダルトチルドレン(AC)は透き通るように単純に見えはしません。その人その人の生い立ちと機能不全家庭の在り方によって、また、親の性格タイプとその子の性格タイプによって、生き延びるために強いられたものはそれぞれ違うからです。

こうして考えてくると、アダルトチルドレン(AC)が、なぜ対外的に、そして社会的に問題を抱え込んでしまうのか見えてくると思います。つまり、アダルトチルドレン(AC)は人(他者)を信頼することが出来ないのです。長い間、本来の自分を偽って、苦しみながら「役回り」を演じてきたために、人(他者)の温かさを感じることが出来なくなっているからです。どのような「役回り」を演じてきたかに関わらず、アダルトチルドレン(AC)は自分が人(他者)とのつながりの世界から永遠に切り離されているように感じるのです。

多くの健全な人々は、人(他者)とのつながりにこそ「生きる意味」を見出しています。親と子のつながり、友人とのつながり、恋人とのつながり、家族とのつながり、これらのつながりこそ「生きる意味」の基礎をなしています。「生きる意味」とは、この意味で、「愛」であり「友愛」であると言って良いでしょう。

ところが、アダルトチルドレン(AC)は、幼少期、まさにこの地点で人(他者)とのつながりを失ってしまったのです。そうだとしたら、どうして「生きる意味」を見出すことが出来るでしょうか。どのように「愛」を見出すことが出来るでしょうか。

 

 

ここまで来て、アダルトチルドレン(AC)がなぜ生き辛いのか、なぜいつも虚しいのか、なぜ絶望しているのか、少しずつ見えてきたのではないでしょうか。

次回は、小中学生だけで13万人を超えたと言われる「不登校」と、アダルトチルドレン(AC)がいかに密接に絡まっているかを見て行きます。

 

お楽しみに!

 

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